通勤災害にも安全配慮義務がある―労働者は生かさぬ様に殺さぬ様に ―

 深夜勤務後バイクで帰宅途中に電柱に衝突して亡くなられた、会社従業員の遺族が、会社に損害賠償を求めて訴訟を起こした事件で、横浜地裁川崎支部の裁判長は、帰宅途中の事故であっても会社に安全配慮義務があるとした上で、和解するよう説得し、和解が成立したという記事が某新聞に掲載されていた。亡くなられた方及びそのご遺族の方々に対し心から哀悼の意を表します。

 従来、使用者責任が問われるのは、企業(使用者)の指揮命令下にある労働者に対して使用者責任が問われるものであって、企業の指揮命令下から外れる通勤途中の災害(事故)は使用者責任はないとするのが通例だったと思う。

 では、深夜労働は珍しくないこの頃、今回はどうして安全配慮義務を問われたのだろうか。裁判長は和解勧告で次のことを指摘している。

 1.長時間労働が続き疲労が蓄積していたため居眠り運転による衝突事故だったと認められること(当日は22時間勤務で、前1か月の時間 外労働は90時間だった)
 2.職場に仮眠室等がなく休憩することが出来なかった。
 3.通勤方法を企業が指定していた?

 これ等を総合的に判断して、企業の安全配慮義務を怠ったということらしい。

 1.はもっともと思われる。しかし、2.3.は異論のある事柄ではないだろうか?

 我が国の企業は97%が中小企業だと言われている。そのうち小規模事業者(労働者20人以下)が約8~9割を占めているといわれている。業務の内容によっては10人そろえばある程度の業績を上げることが出来る。でもそれほど儲かる訳ではない。したがって広い事務所や作業場を借りることは出来ない。労働者10人以下の事業所では殆どが、狭い事務所(作業所)に甘んじている。休憩所など備えている企業はない。それどころか着替える所もない、ロッカーさえない。皆、小さな机1つ与えられるだけで、その机で業務をこなし、弁当を食べ、その机に突っ伏して休養する、トイレはあるが、男女兼用で使用している。零細企業の実態なんて皆その様なものだ。

通勤定期代は、税法上月額15万円まで無税だがとてもそんな高額は支払えない。精々月額2~3万円が限界だろう。でも公共交通機関は年々発達してきて、快速、特急、急行、通勤快速、期間特急等々スピードアップして来ているので、相当の遠距離からでも通勤出来る。したがって丘陵を切り開いて造った住宅街からも通勤して来る人は多い。

 通勤は、費用の廉価な通勤経路で、ということになっているが、実際には労働者の好きにさせている企業が多い。6か月の通勤定期代は廉価だがこれがタクシーを利用するとなると片道5千円や1万円では済まない地域が多い。住宅街(ニュータウン)は人通りが多くてもその途中は、人通りも少なく薄暗い道路も多い。そういう所で事故に遇った場合は、やはり企業の安全配慮義務を怠ったことになるのだろうか?。又、通勤電車の中で事故に遭った場合は、満員電車に乗って通勤している事が、安全配慮義務を怠っていることになるのでしょうか。

 長時間労働は労使の話し合いによって解決出来る可能性はあるが、日本の現況を一企業の力で変えることは難しい。
 空を飛ぶものは落下の、水に浮かぶものは沈没の、陸を走るものは衝突のそれぞれ可能性がある。そのリスクの中で生きている。それで事故が起これば全て企業の責任なのだろうか。

 企業が紛争に巻き込まれた場合、変な風評が流されれば悪いイメージが多くの人々に植え付けられる。それにより、取引停止や商品のボイコットの憂き目にあう、大概のことは泣き寝入りせねばならない。何でも企業のせいにしてそれで済ませてしまえば楽だろうが企業の方でも自衛のために、最低賃金ぎりぎりで後は事故処理ように留保しておかなければならない。

 こんなことが続けば起業する人も少なくなるだろうし、経済の発展も望めない、日本は益々萎縮していくだろう。

 労働基準法第2条をよくよく理解することが肝要と思われる。

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