【波乱の2008年】 ~男はつらいよ初詣篇~

 テレビ画面に「0:00」の表示が出た。外は初詣に行く人々の気配がするし、テレビは各局とも活気づいている。これをよそに、私は消灯して眠りについた。私の一年の始まりは、いつも眠ることから始まる。

そして、7時に起きた。まだ静かだ。それでも外は日差しが明るい。布団を上げ、ひげをそり、顔を洗う。初詣に行かねばなるまい。特に行く意味などないのだが、毎年そうしている。どこの神社仏閣に行くか迷う。無宗教、無信心の私は神仏に頼る気持ちはない。およそこの世の中で、これ程あいまいで、いい加減で、しかも絶対なくてはならないもの、それは、女性と神仏だと思っている。
 昨年までは近隣のよしみで、すぐ近くの神社で間に合わせてきた。がしかし、今年は、変えようと思う。その神社の祭神が私にバチを当てたからではない。この祭神と同じ他の社でとてもいやな思いをさせられたため、今後一切無視することにしたのだ。神社のほうでも別段文句も言わないし、100円の賽銭には未練もないだろう。どうせ頼み事なんか聞いてやる気もないのだし、、。ちょっと思案した挙句、やはり近所の他の神社に行くことにした。外は寒く、人影もまばらだ。いつも廃屋に近いこの神社も今日の日ばかりは、それなりにきれいにして幕などが張りわたされている。この時間帯、参拝者は2~3人しかいない。社殿の割には賽銭箱の大きさが目立つ。賽銭箱に100円を放り込み、型通り参拝した。願い事は、家内安全、無事長久、無病息災,金がたまりますように、ついでに世界平和も頼もうと思ったが、馬鹿らしくなってやめた。
 帰ってきてまず手を洗う、お湯の蛇口をひねったが、出てきたのは水だ。手を洗い終わったころにようやくお湯らしいものが出てくる。この家は5年前に新築したものだが、使用されている設備、備品等は全て古い。部屋の天井のすみは雨がにじんでいるらしく黒いシミができている。室内や台所の壁は、カビが黒くこびりついている。壁は漆喰の様なものらしく、ざらざらしていて擦るとぽろぽろ崩れてくるので、掃除も出来ない。だいたい、部屋、台所、風呂場等は常に拭き掃除をしなければならない場所だ。それくらい日本家屋に住んだことのある人はいやでも知っていると思うのだが、、、。
 朝風呂に入るため浴槽にお湯を入れる。ユニットバスで追い炊きがきかない。ビーバーが薄ら笑いをしている小児用の湯温計を浴槽に投げ入れる。半身浴をするため、46度に調整する。すぐ冷めるので、入るときちょうどいい湯加減だと、出るときには風邪をひいている。ちょっと汗をかいて湯冷めする直前にパッと出る。この湯加減とタイミングが難しい。天ぷらを揚げるコツである。刀鍛冶なら後世に名を残すに違いない。
 遅い朝酒の支度に取り掛かる。私は大晦日には酒を飲まない。元旦の朝飲むのである。別に意味はない。いつの頃からかそうしている。何十年位前からか忘れてしまった。
 冷蔵庫から、安物を更に値引きされたおせち料理(蒲鉾,伊達巻、昆布巻、きんとん、黒豆、ごまめ)を取り出し、適当に切り、重箱ならぬタッパーに詰める。屠蘇代わりの酒をつぎ、準備が整う。
 さあ、新年を祝して一杯やろう。子供達もすぐ挨拶にくるだろう。酔いがまわってくると、まわりくどくなる。願わくは酔わないうちに来てほしいものだ。どうせ何を話しても右から左だろうが、一応話はしなくてはいかん。これも元日だからだ。あとは、酔った勢いで眠って気がつけば夕方というわけだ。かくして波乱の2008年の幕が切って落とされた。
今年の結末は、私にも、神様にもわからない。

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