日本ではそれほど話題にならなかったように思われるのですが、昨年末に帰省した時に家族から話を聞いていたマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画「シッコ（ＳＩＣＫＯ）」を先日見ました。シッコとはアメリカの俗語で「奇人」「変人」という意味だそうです。要は、アメリカの医療制度は、Ｓｉｃｋｏ！だということらしいのです。
アメリカは先進国で唯一公的医療制度がなく、多くは民間企業の医療保険に加入しているのですが、医療保険に加入できない国民が６人に１人いるそうです。こうした人々は、医者から請求される高額な医療費を支払うことができず、満足な治療を受けられずにいます。治療費を払うために借金をして長年暮らしてきた家を手放した高齢の夫婦、病院をたらいまわしにされたあげくに亡くなった女の子の悲劇、また、冗談のような話ですが、仕事中に指を2本切りおとした大工は、薬指だとくっつけるのに1万2千ドル、中指は6万ドルと聞き、お金がないため、しょうがなく薬指を選び、現在中指はないということなのです。他にも、支払いが滞った老女が、夜中に路上（貧民街）に放置されるなど、悲惨な例が次々と紹介されます。
それでも、保険会社は自らの利益を上げるために、あの手この手を使って治療費等の支払いをストップさせ、自分たちに有利な法律を作るために、政治家には多額の献金を行い、保険、医療、製薬会社が巨万の富を得ているという現状です。
一昔前なら、よその国の遠い出来事のように感じたでしょうが、今現在の日本に目を移すと、「国民皆保険」制度はあるものの、財政再建というお題目を繰り返しては、高齢者医療の切り捨てをはじめました。全然他人ごとではないという話です。
特定財源しかり、「税金の無駄使い」をやめればいくらでも医療費は捻出できるはずです。それにメスを入れ、足りなければ、国民に負担を強いるという話は十分に納得できるのですが、それには全く手を着けず、弱者ばかりを追い詰める姿勢は、このままでいくと将来、アメリカ追従型の日本が、アメリカのようになりかねないということを危惧せずにはおれません。
日本の国民皆保険制度をいかにして維持していくか。この大問題には、もっと正面からとりくまないといけないことを痛感させられました。
強烈なインパクトのある映画でしたが、日本でも、このようなパワフルな映画ができないものかと願うばかりです。
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