管理職という怪物 [男はつらいよ考]

少し遡るが、UFOは存在するか?というようなことが話題になったことがある。UFOが攻めてきた場合に、自衛隊がどうするかというようなものであったと思う。その存在はわからないし、わからないものは表わし様がないはずだが、何となく円盤形の飛行物体で表しているように思われる。

 UFOが未確認物体と言いながら、ほぼ楕円形ということに落ち着いているようだが、管理職(管理監督者)というのも、何となくそれぞれのイメージで形作られているようである。しかしながら、経営者からみた管理職と、労働者側が考えている管理職、それと、裁判所(判事)が考えいてる管理職とでは抱いているイメージが、食い違ってるのではないだろうかと思われる。 しかも、私達には、その形が、管理監督者として実態を伴わないものというより、実態と離れて、一人歩きしているように思われてならない。

 管理職とはどういうものか?国家公務員法には、「管理職員等」というものがある。しかし、それは、民間企業には全く当てはまらない。労基法には管理監督者は、カッコ書きに入っていて、「管理職」という名称は一切法律の条文には出てこない。決まってもいない「管理職」が一定の形を作りつつある。

 どんな企業でも、法定労働時間や週休制で管理するのにふさわしくない業務があることは事実だ。これは、農林水産業がこの規定の適用除外となっているところからもよくわかる。したがって 、この、法(規定)になじまない部分については、労働基準法の解釈にあるとおり「(管理監督者は)、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである」のであり、この法律(規定)自体は妥当であると考える。

 問題は、この法律を悪用して運用する大企業の体質にある。別稿に譲るが、中小企業、とりわけ零細企業(差別するつもりはない)の経営者たるや、ほとんどが「名ばかり管理職」ならぬ「名ばかり社長」だ。大企業がいい加減な金もうけに走れば、走るほど、それを阻止するために、国がいろいろな法律等による規制を設ける。その結果、苦しむのは零細企業だ。

 映画「男はつらいよ」に出てくる団子屋さんの隣の印刷業の社長(タコ社長)は、まさに零細企業の事業主である。汚いジャンバーにヘルメット、おんぼろバイクに乗って朝から晩まで、日々、営業、金策、と走り回っている。そして、前田吟、演じる工場責任者の博、彼がいわゆる「事業主と一体にある者(管理監督者の要件の一つ)」である。

 あるとき、タコ社長が仕事を請け負って来る。工場責任者の博は「最近は、安いものばかり請け負って来る。こんな仕事はやればやるほど赤字が増える。もうそんな仕事はしない。」と怒り、タコ社長はおろおろして泣かんばかりに、博に頼み込む。博は憤然として怒りながらも、他の工員を励まして、全員で力を合わせて納期まで間に合わせるのだ。

 又、ある時博は、一人息子の、吉岡秀隆、演じる満男の就職先が決まらなくて、イライラしている。タコ社長や他の工員達が、「いっそここで働いてもらえばいいのに」と話しかけるが、これに対して博は怒ったように言う。「あんな怠け癖のついている奴に、こんな厳しい仕事が勤まるわけないでしょう。私が採用しませんよ。」
きちんとしたいい仕事をするためには、最愛の息子でさえ、はじきだすのである。社員10人や、20人以下の会社では、一人でも、身勝手な社員や、怠ける社員がまじっていれば、それが命取りになるからである。

 この映画は、フィクションだが、描かれている零細企業の実態は、現実そのものである。もっと大変な苦労をしている零細企業はいっぱいいる。もちろん、このままでいいといっているわけもなく、社員全員が、週40時間以内の労働で、収入も安定して、それなりの人生を謳歌できるような態勢を作らなければならないことはいうまでもないが、そこまで至るにはまだまだ多くの課題がある。

 労働者を食いものにしている大企業の経営者、税金を私財と勘違いしている高級官僚、自分で働いたことのない裁判所の判事の方々どうか、もう少し目線を下げて、現実を認識しながら、諸事、実態に即して判断していただきたいと考える。

― 「男はつらいよ」 主題歌より ―
♪♪♪
 どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
目方で男が売れるなら こんな苦労も
こんな苦労も掛けまいに 掛けまいに
男というものつらいもの
顔で笑って顔で笑って
腹で泣く腹で泣く                  ♪♪♪

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カテゴリー: 男はつらいよシリーズ タグ: パーマリンク