マクドナルド裁判 その1

日本マクドナルドの直営店の店長の時間外手当請求事件において、東京地方裁判所は1月28日、店長は労働基準法上の管理監督者(管理職)ではないとして、残業代など約755万円の支払を命じた。

 聞くところによると、この様な裁判は約30例程あり、そのほとんどが労働者側の勝訴だといわれている。労働者側は、銀行の支店長、レストランの店長、工場長等々であるが、いずれも「管理監督者にはあたらない」からである。

 労働時間等に関する規定の適用除外として、労働基準法第41条第2号に、「事業の種類にかかわらず、監督もしくは管理の地位にある者」という条文がある。 この趣旨は、監督もしくは管理の地位にある者は、業務の特殊性から、労働時間・休憩・休日の原則そのものを適用しない、ということだとされている。

 さらに判例によると、監督又は管理の地位にある者(管理監督者)に該当するかどうかは、以下を判断の基準としている。
①労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるものをいい、名称にとらわれず実態に即して判断すべきもの(昭63.3.14発基150号)。
②経営上の重要事項に関する企画立案等の業務を担当する者(昭63.3.14発基150号) 。
③時間外手当てが支給されないかわりに、管理職手当ないし役職手当等の特別手当等によ り、その地位にふさわしい待遇がされていること(昭63.3.14発基150号)。
④出退勤については、時間に拘束されず、自由である(静岡銀行事件等) 。

 企業が業務を推進させるにあたり、各部署や、各支店に従事する者を集めて、一つの集団体を形成し、これをまとめていくためには、どうしてもリーダーが必要になる。そのリーダーを「係長」「課長」「組長」「組頭」等の語句を用いてきた。工場のリーダーだから「工場長」、お店のリーダーだから「店長」はっきりしてわかり易い。

  たとえば、 社員が10人~20人の企業ではどうだろうか。古参社員になれば、採用から給料の決定等社長と直接打ち合わせの上やるだろうし、業績を上げるためには社員の教育から配置もやらなければならないし、営業、仕入れ、集金等々、まさに「経営者(社長)と一体的な立場」そのものである。
 これが、社員数50人~100人の企業だと、とても一人ではやれたものではない。2人ないし3人の経営者と一体をなす者が、それぞれ得意の分野に従って、営業担当、経理担当、製造担当と分担しなければならないだろう。
 更に、社員数が500人、1,000人という企業ではどうだろうか。又、支店、営業所等を各地に展開した場合に、その規模において、そこのリーダーは、経営者と一体的な立場に該当するといえるのではないだろうか。
 前述した①の要件は、その企業の全体ではなく自分が任せられた企業の一部を管理監督し、運営することが、その社業の日常業務は、のその部分について、経営者と一体的な立場になる者と解することができるはずである。

  マクドナルドだけでなく、他の外食チェーンしかり、その店のリーダーは、その支店について①を全てまかされているのであれば、その部門に於いては経営者と一体的な立場にあるのといえるのではないだろうか。

 それゆえ、M社の場合でいうと、③の待遇面でアルバイトやパートより劣る(店長の給料が安い)から、管理監督者ではないというのであれば、理解できる。しかし、経営者と一体的な立場にはないから(経営に関与していない)という理由で、管理監督者ではないというのは、おかしいと思う。極論すれば、約1700店の店長が、取締役や執行役と同様に、業務運営会議に参加しなければならないのか?ということになる。

 労働基準法の条文上は、第41条第2号「監督もしくは管理の地位にある者」以外は、「使用者」、「労働者」のどちら側かということしか規定されていない。 しかし、そもそも「経営者」と「使用者」は一緒だろうか?それはさておいても、①~④の「管理監督者」の定義や解釈に、無理があるのではないかと考える。

 M社の店長のように、時間外労働が多すぎるのは、論外であるし、結果については妥当だとは考える。
しかし、なぜ店長は、過酷な状況に追い込まれながらも、会社を辞めなかったのだろうか?。
この問題については、また次回に。

村越経営労務研究所のHP

ブログランキングに参加しております。よろしければポチッとお願いいたします。

士業ブログランキングへ
にほんブログ村 士業ブログへ

人気blogランキングへ

カテゴリー: 労働法 パーマリンク