”蟻地獄”

先日某新聞に面白い記事が掲載されていた。確か「声」の欄だったと思うが、あるとき年老いた母親が娘に(といってもある程度高齢の)私が死んだらこれを開けて読んでください、といって一通の文書を渡してくれた。数年後母親が亡くなったのでその文書を開いて見たら、私はあなたが嫌いだった、いついかに、こういうことがあった、こういうことを言われた、こういうことをされた、等々、自分の行跡とそれが如何にいやな思いをして恨んだかというような、恨み、辛みが事細かに書かれてあったという、そしてそれが事実であり、あのときに何気なく言った言葉が、とった行動が、母親にこんないやな思いをさせていたのかと、つくづく後悔したというものだった。
それから「もう限界」「ロスジェネ男性の半生」というのもあった。

ロスジェネ(ロストジェネレーション)・・・いろいろ解釈があるが、バブル崩壊後、就職氷河期に社会に出た方々、運がよかった人、悪かった人、差が激しい・・・
この方は運が悪かった方に入ると思うが、好むと好まざるとにかかわらず、職を転々とする、ある程度の年になっても結婚に踏み切れない、非正規雇用、過酷な長時間労働、心労等により病気になる、どんなに努力をしても人間一人のやることには限度がある、高齢になって行き着くところは生活保護を受ける、といった人生の遍歴、余りにも空しい。
これらは自分一人ではどうにもならないことが多い、政府はかけ声ばかりで実際には何もやってくれない。物価(特に生活必需品)はどんどん値上がりしている、賃金は低い、労働時間は変わらない、公的納付金(税金、雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料は増えていく)反比例して給付額は減少していく。コロナ、インフルエンザ、風邪、肺炎類等伝染病原体蔓延の中で、無神経の人達と一緒に生活していかなければならない。

最近の事件、ぼっちの殺人事件、電車内での凶器障害事件、女性刺殺事件、陸自の射撃場事件、某歌舞伎俳優の一家心中事件、小学生教師の大量退職、トラックドライバーの極度な人員不足等々皆は少しでもこの国のよい方へと行動した結果が、前述のような事件につながっている。

国民全員が少しでもよい方向へ行こうと一生懸命あがいているのだが、それができないでかえって悪い結果を出してしまっている。蟻地獄に落ちた蟻のように、出口が見えているのだが、どんなに焦っても、あがいても空しく手や足が疲れるばかりでどうにもならない、そのうち力尽きてすり鉢のような穴の底に沈んでしまう。

私たちの場合はその底に沈んでいるものが、ウスバカゲロウの幼虫ではなく、政府なのだが、政府は何もしないばかりか、弱い私たちが何とかこの境遇から抜け出そうともがいているのを見て見ぬふりをしているのだから余りにも情けない。

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